ポップミュージックは一品料理だけでなくフルコースも -緊急事態宣言37日目-


「アルバムを聴く」ということを近年しなくなった。アルバムを曲を全部聴くということは日常の中であったし、車の中でアルバムまるごと流すことはあったけど、まるまるアルバムを黙って座ってずっと聴き通すということは本当になくなった。

 


サブスクで音楽を聴くことが当たり前になり、アルバム1枚3000円出して買っていた頃に、しみじみと1枚の重みを感じながら聴き込むということは減って、つまみ食いで色んなアルバムから色んな曲を聴くように、特にここ2年間はサブスクを始めたことにより、強まっていった。

 


自粛期間に、The  ZombiesというアーティストがSpotifyのレコメンドで流れてきた。「This Will Be Our Year」という曲で、数年前にゼクシィのCMで使われていた曲らしい。

ゼクシィの曲はゼクシィの世界観に馴染みすぎて、曲をはっきり覚えていないことがあるのかもしれない。ジョン・レノンの「(Just Like) Starting Over」がゼクシィに使われていたと聞いたときもあまりピンと来なかった。

CMとしての統一感がものすごいのかもしれない。

 


初めて Spotifyから流れた「This  Will  Be  Our  Year」の優しいメロディ、リリースから50年経った今聴いてもポップでなじみやすいサウンド、そのときに表示された僕の好みでしかないサイケデリックでカラフルなアルバムアートワーク。あとあと調べて知ったラブリーなリリックも、「なぜこんなバンドを今まで知らずに生きてきたんだ!」と思わずにはいられなかった。

 


他のアルバム曲をちらっと聴いても、サイケな雰囲気を醸し出しつつ、ポップさや美しさがあり、これは全部聴こうということで、アルバム「Odessey & Oracle」を全部聴いてみた。

ODESSEY & ORACLE (MONO [12 inch Analog]

ODESSEY & ORACLE (MONO [12 inch Analog]

  • アーティスト:ZOMBIES
  • 発売日: 2014/03/01
  • メディア: LP Record
 

 全部で35分ぐらいのアルバムで、無駄にラウドになることも、無駄に壮大っぽく魅せることもしない、ただただやりすぎ感のない感じで色んな音色が美しいコーラスや優しいメロディを支えていて、気づいたら世界観に引き込まれて、心地いいまま最後まで聴ける僕好みのアルバムだった。

 


まだThe Zombiesのことは知らないことだらけだ。18歳前後で、通過儀礼的に聴いたThe Beatlesの「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」やThe Beach Boysの「Pet Sounds」よりもこのアルバムが好みだと思ったのは、大人になってから聴いたからかもしれないし、自分で見つけました感の若干のひいきがあるのかもしれない。

 


「このアルバムが好き」という場合、ほとんどは、「このアルバムに収録されている曲たちが好き」という意味合いが、最近の自分の中では強かったと思う。今回は「このアルバムを通しで聴くのが好き」という意味合いも強いかもしれない。久々に、アルバム丸々聴くことの面白さを感じた。


じっくりと音楽を聴く時間もあることだから、アルバム単位でポップミュージックを聴くことも楽しみたい。多くのアーティストは楽曲単位だけでなく、アルバム単位でも作品を捉えているわけだから、楽曲単位でしか聞かないのはもしかしたら、おもしろさの半分しか、ここ数年の自分は味わえていないかもしれない。

一品料理とフルコース。一品料理しか知らないのはもったいない。大好きな一品料理を出すレストランのフルコースもやっぱり味わっておきたい。もしかしたらフルコースだと気が利く前菜の存在や今まで好んでいたメインディッシュがいつも以上に味わい深くなるかもしれない。


さて、今度はアジカンのアルバムを丸々聴いてみようかな。今まで曲単位でしか聴いてこなかったから。

 


Hayato